一挙に咲きそろった街路樹の桜を眺めながら、恵比寿から白金へと。
すっきりとした白壁に、凛と下ろされた純白の暖簾。
一度、夜にも訪れたいと思っていたお店は、ほんのりと看板に灯りが灯り、気品溢れた佇まい。
白金 「三合庵」
久し振りのお店をしばし眺め、扉を開くと、ふっと感じる気品の良さ。
黒を基調にしたインテリアに、隅々まで神経の行き届いたきりっとした空気。
浮ついた感じのない、落ち着いて、蕎麦屋の禅とした風格漂う店内は、さすが、素晴らしいなぁ、と思わせる。
何年か前に拡張して広くなったお店だが、休日の夕方は、既にほぼ満席。
予約をしておいたテーブルに三人で腰を下ろし、まずはビールをお願いすると、次々に並べられる、こちらの名物、小さな「前菜の小鉢」達。
まろやかな胡麻だれのかかった菜の花に、しっとりと炊かれた卯の花。
それに、酢味噌がかかった味わいの濃いホタルイカに…
小さな器の蓋を開けると、ぷるぷるの玉子だけで作られた熱々の茶碗蒸し。
どのお料理も小さいながら、とても丁寧に作られしみじみと美味しい。
そして、この前菜をゆっくりと味わった頃合いに、「夜のおまかせコース」のお料理が運ばれ始める。
まずは、上品に盛られた「天然帆立貝柱にタラの芽の天ぷら」。
塩を添えて出された天ぷらは、軽やかでしっとりとしてカラリとした衣。
タラの芽はもちろん、この帆立貝柱がすこぶる美味しい 。
しっかりとした身に、かぶりつくと帆立の旨みがじわ~っと広がってくる。
と、帆立の美味しさに感動しているところに出された、名物の「しんとり菜のお浸し」。
山菜に竹の子も混ぜて作られたお浸しは、上品な出汁の味わい。
しんとり菜の甘みに、わらびのぬめりが楽しく、しみじみと頂いてしまう。
と、これらのお料理に…、
話もだんだん深まってきたところで、ビールからお酒に切り替えて。
「蕎麦通の酒」のラベルがニクい、山形のお酒「粉名屋小太郎」を。
すっきりとして口当たりの柔らかいこのお酒を頂いていると、次に出されたのは、ほかほか出来たての「出汁巻き玉子」。
ふわっふわでジューシーな出汁巻きは、甘さ控えめの出汁の味わい。
そして、一緒に出された、たっぷりと盛られた「漬けもの盛り合わせ」。
胡瓜に蕪、それに今が旬の甘みの濃い春キャベツの浅漬け。
それに山芋の味噌漬けとどれもが美味しく、漬物好きとしてはこれはうれしい。
かわいらしくコロンっと出された「新じゃがいもの煮物」は、ほっこりと炊かれた優しい味噌味。
体がきれいになっていくような、新鮮な野菜のお料理にゆっくりとお酒を進ませていると、これも繊細に盛られた「蛸と雲丹のお造り」。
小さく切り分けられた蛸は食べやすく、身がしっかりと締まり味が濃い。
甘くてしっかりとした、質のいい雲丹が美味し~い 。
それに、歯ごたえのあるさっぱりと味付けされた「天然もずく酢」。
熱燗のお酒も追加で頼み、最後のお料理は、「水菜と揚げの煮びたし」。
しゃきしゃきっとし水菜は熱燗に心地よく、引かれた出汁が本当に美味しい。
しっかりと取られた、上品でありかつ奥の深い味わい。
たっぷりの野菜料理は体に優しく、すっかり満足したところで…
いよいよメインのお蕎麦が出される。
「かけ」と「せいろ」から選べるお蕎麦は、三人揃って「せいろ」を選んで。
蕎麦猪口に薬味が置かれ、すっと置かれた笊に盛られた蕎麦。
角の立った端正な細切りの蕎麦には、豪華に散りばめられた蕎麦の欠片。
この野趣さ長けた粗挽きの姿は、見ているだけでもうれしくなってしまう。
お聞きすると島根の蕎麦との、生粉打ちの蕎麦を手繰り上げると、ふわっと優しく香る蕎麦の香り。
口に含むと、まず感じる、心地のいいざらつき感。
程良い腰加減の蕎麦を噛み締めるとじわりじわりと香ばしい風味が広がり、喉元過ぎたあたりから、ぐわ~っと込み上げる、蕎麦の味わい。
やっぱり美味しいな~… と、しみじみと味わってしまう。
添えられたもり汁の美味しさもしみじみと感じながら、量も上品なお蕎麦は、三人あっという間に食べてしまい、
「温かいのも食べようか…」
と、追加で温かいお蕎麦も注文~。
程なく出てきた「かけそば」は、ほとんど透明のような澄んだかけ汁に、さっと三つ葉が散らして出される。
そして、私の頼んだ、九条葱、白髪葱、揚げ玉が乗った「刻みそば」。
まずはと頂く汁が、なんって優しい。
すっきりとして柔らかく、それでいて出汁がじっくりと引かれた極上のかけ汁。
体の隅々まで行きわたるような汁に、それだけで堪能してしまいそう 。
そして、中の蕎麦をと手繰ると、せいろより気持ち太めに切られた蕎麦は、温かい汁の中でもしっかりとした歯ごたえを残し、もちもちとした感覚が加わっている。
ざらりとした歯ごたえもそのままで、この汁にからみ頂く蕎麦が、又美味しい。
と、すっかりお汁まで頂いてしまったら、話し合いも一時忘れて、心から満足した至福の心地
そして、先のもり汁に優しく白濁した蕎麦湯を注ぎいれ、余韻に浸りながらゆっくりと楽しんでいると…
うれしいデザート、「黒糖のアイスクリーム」が置かれる。
黒糖独特の風味の濃い、それでいてさっぱりとしたアイスクリームは食べた後にたまらない。
下に置かれた小豆も上品な甘さで、これもじっくりと味わい、すっかり大満足
ずっと一度来てみたかった、「三合庵」さんの夜のお料理。
思っていた以上に野菜料理が豊富な品書きに、どれもがとても繊細に作られたお料理は素晴らしい。
お話はまだまだ先がありそうだけど、今夜は素敵な夜のひと時。
ご馳走さまでした~
幸せな心地で外に出たら、ひと雨あったような空気が優しく湿って柔らかい。
もう、すっかり春だ…
*お品書き
せいろ 730円、おかわり 680円、天せいろ 1,780円、とろろ 990円、納豆そば 940円、かけ 730円、きざみ蕎麦 940円、天ぷら蕎麦 1,780円、山かけ 990円、にしん蕎麦 1,470円
しんとり菜のお浸し 730円、ざる豆腐 730円、浅利の時雨煮 680円、さつま揚げ 680円、板わさ 730円、天ぷら盛り合わせ 1,780円、玉子焼き 680円、山葵芋 680円、にしん 730円
八海山、菊姫、〆張鶴、緑川、呼友、久保田、米百表、越州、雪譜 850円~
夜のおまかせコース 5,500円~
「三合菴」
港区白金5-10-10
03-3444-3570
11:30~14:30 / 17:30~21:30
水曜・第3木曜定休日
店内禁煙
関連日記
2007年 7月24日 「玉子焼き」に「せいろ蕎麦」
2005年 1月14日 せいろ蕎麦
K様、H様、ありがとうございました~
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本当に極上のかけ汁でした。
こういう汁に出会うと、本当に幸せな気分になってしまいます(^^)。
かけはお汁がたっぷりですな
お汁が絶対これは美味しいだろうと
想像させます
おいしいかけ蕎麦が食べたくなってしまった
前よりもずっとゆったりとして寛げます。
ぜひぜひ(^^)。
「せいろ」はさすがの美味しさでした。
粗挽きの良さが出ていて風味もよく、さらにこの「かけ」!
これは絶品です(^^)。
ここは、新宿にある吉遊のある場所で営業していた頃からのファンで、白金に移ってからも、改装する前には何度か足を運んでいましたが、改装後未訪問~行きたいと思っていただけに、羨ましい(^-^;
「せいろ」ももちろんですが、「かけ」がまた美味しそうです。
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