またすぐ行きたいと思っていながら、気づいたら随分ご無沙汰。
つい先週、お友達からお店やご主人の話を聞いてから、行きたくてたまらなく…。
午前中の仕事を済ませたら、今日は迷う事なく、
高田馬場のゆるやかな坂道をえんえんと…。
ありっ、もっと先だった?、
と、やや不安に覚えて頃に…、やっと見えてきた、懐かしい小さなお店。
うっかりしてると見逃してしまう、
ビルの合いだに埋もれるように、そっと小さな暖簾が下ろされ、
静かにひっそりと、質素に佇む…
高田馬場 「傘亭」
午後1時もとうに過ぎた昼下がり。
扉を開くと、小さなカウンターには先客の男性が一人のみ。
並びの一つ離れた椅子を引きながら…
ゆっくりと横の壁に貼られたお酒の品書きを上から眺める。
きれいな文字でしたためられた、ずらり並んだお酒の銘柄。
中に宮城のお酒「伯楽泉」の文字を見つけ、途端に切ない気持が込上げる。
甚大な被害を受けた蔵、そのお酒がここに…
「決まりましたでしょうか」
ご主人の声にはっとし、すぐにお願いした「伯楽星 純米吟醸」。
注いでくれているご主人に、「これ、宮城のお酒…ですよね」
と伝えると、「そうそう、もう…、しばらくは飲めなくなっちゃうかもねぇ」
と、残念そうにおっしゃる声を聞きながら、口に含むお酒は、
すっきりとして、どこまでも清らかな、とてもきれいな味わい。
これに合わせるお料理は…、と貼られた品書きを一通り眺めるも、
ここに来たら、やっぱり食べたい。
名物、絶品の「傘亭」の「くずれ豆腐」。
器にたっぷり盛られた、とろりまろやかな「掬い豆腐」に、
その上にトッピングされた、茶豆に生海苔。
添えられた木のスプーンですくい口に含むと、それだけでしっかり濃厚。
大豆の味わい、その甘みが実に濃く、ああ…やっぱり美味しいなぁ 。
しかも、乗せられた茶豆の塩味が、豆腐の甘みをじわりと深め、
さらに、これも磯の香ばしい濃厚な生海苔を一緒に食べると、
豆腐の甘みに、海苔の香ばしさが交わり…、ん~たまらない。
BGMのない、静かな空間で頂くこのひと時、ああ、傘亭だなぁ…
と、楽しみだしたところで、さらに一人ふらりといらっしゃり、
なんとも言えない、ゆるりとした時の流れに身を委ね、
カウンタに貼られた、丁寧に書かれた「震災後の野菜産地」をじっくり眺め、
何とも言えない、傘亭での午後のひと時を慈しむ。
ふと、天井すぐに置かれた「本日の変わりそば」を見ると、
これはうれしいっ、変わり蕎麦の中でも、殊好きな「芥子切り」だ
〆のお蕎麦は、二色で頂こう~♪、と、思っていたら…
えっ??、後から来たお客さんが二色を頼み、
すぐにご主人が、パタンっと札を外しちゃったぁ~
「もっ、もう芥子切り終わりですかっっ??」
とあせってお聞きすると、
「普通だったらまだあるんだけど…、今日は早くて。田舎もあったんだけど…」
と、カウンタ越しに、申し訳なさそうにもおっしゃられる。
なんですとっ?冬季だけだと思って諦めていた、田舎もあったっ?
と、積年の望み田舎もあったの言葉に、すぐ飛びつきお聞きすると、
GWくらいまでは、香りは落ちてはいるけどやっているそう。
そっ、それは急いで食べに来なくては…!
と心に誓いつつ、今日は残念だけど、さっぱりと「せいろ」を頂こうか…
と、改めて品書きを眺めていると、
「温製」も、「~5月まで」になってるいる 。
まだ暖かい蕎麦は食べた事がないし、なんだか妙に肌寒い。
と、「傘亭」の「綴じ」を見たくて頼んだ、「玉子とじ蕎麦」。
うわぁ、こんな豪華な「玉子とじそば」は初めてかも
優しいベビーピンクの玉子の花畑を背景に、
アスパラ、いんげんのグリーンが立てられ、さらにそっと添えた春キャベツ。
お口のような絹サヤに、菜の花が真ん中に置かれ、はらりと散ったピンクの生麩。
まずは、かわいい陶器のれんげで汁を掬うと、
済んで透明なかけ汁が…、なんて、何て美味しい~っ
どこまでも柔らかく、上品で清らか。
おおよそ、蕎麦屋のかけ汁を超えた、料亭の汁の味わいに、
いつまでも飲んでいたくて、掬う手が止まらない。
中の蕎麦を手繰れば、程良く残した歯ごたえがあり、
しっとりこの汁を纏った蕎麦は、ふわっと香ばしい風味を放つ。
何より、この汁に絡まったこの蕎麦が、たまらなく…
玉子は、どこまでもふわっふわ。
まるで綿毛のような、心もとない程にほろほろとして、優しい玉子の味わい。
繊細で軽やかなこの玉子、これも美味しい~
さらに、春キャベツはさっくりと柔らかくて、甘みが濃厚。
キャベツと一緒に食べる蕎麦が、又これとない楽しさに、
グリーンアスパラに、菜の花に絹さや、それぞれの野菜の旨さが実に新鮮。
ひとつづつ、口に運んでは、蕎麦との交わりを楽しんで…
乗せられた蒲鉾を食べれば、すり身の風味豊かな上質の板わさで、
散らされた生麩が、もっちりとしてこれも美味しい。
いつしか、添えてあった海苔が、ほろりと溶けほどけ…
と、様々な風味の楽しめる、なんとも贅沢な「玉子とじそば」。
汁一滴も残したく思いで、すっかり満喫、夢中になって食べつくし…
「芥子食べられなかったけど、これも美味しい~」
と、伝えると、ふとご主人が、
「もし、ほんっのちょこっとでよかったら、芥子食べる?」
の、うれしい言葉に、ぜひぜひ
と、出してもらった「芥子切り」。あ、ホントにちょっとだ (^^;
輝く透明な蕎麦の中にぷちぷちと所々に散った芥子の実は、
まるで、ガラス細工のように繊細で美しい。
手繰り上げれば、ぷ~んと香ばしい芥子の香りが瞬時込み上げ、
プルンっとした、弾むような心地のいい腰加減。
噛みしめると、じわっ、この芥子のこの風味が…、美味しいよう~
が、あっという間、ほど二口で食べてしまった芥子切りだけど、
それでも、食べられた事がなによりうれしく…
そっと出してくれた、デザートは甘~い苺。
ゆっくり頂きながら、久しぶりにご主人とあれこれお話しなどさせて頂いて…
ご馳走様でした~
一見、気難しそうに見えるご主人だけど、お話ししてるととてもお茶目。
やっぱり、傘亭は、何とも言い難い良さがいっぱい。
是非…、今年こそ、田舎を食べに来なくては!
いつしか、どんよりとした雲が現れだし、ぽつぽつ落ち出した雨粒の中、
それでも、心は豊かで暖かな気持ちに満たされて…
(でも、寒かった…)

「手打 傘亭」
新宿区高田馬場3-33-5
03-3364-5758
金曜(祝日の場合は営業)
12:00-売り切れまで。(17:00頃)
店内禁煙
2007年12月12日 「玉子焼き」に「柚子切りとせいろ」の二色そば
2007年10月11日 「崩れ豆腐」「鰊煮」「水晶餃子」、「せいろとうどん」
2005年 8月29日 「せいろと紫蘇切り」二色そば
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コメント、ありがとうございます。
そうなんです、ちょっと思い浮かばないと思いますが、冬季だけ、温かい蕎麦もやっていて…、
流石、傘亭。
かけ汁の素晴らしさに、心酔してしまいました。
玉子焼きも見事ですよね(^^)。
和風オムレツのような、豪華版。
ご主人は、飄々として相変わらずです。
ソバユツさんも、久しぶりに是非…
生麩が色気を出していますね、素敵な変わり玉子とじ。
そう云えば此処の玉子焼きも変わっていますよね。
芥子切りの量・・・これで丁度良いのでしょう。
あのご主人の顔が浮かびます。
うどん…
これも、美味しかったです!
とっても繊細なおうどんで(^^)。
心配なので、今日連れて行こうと思います(/_;)
蕎麦も肴も、とてもいい。(うどんも好き)
温蕎麦も、びっくりですね。
彩り豊か♪
ぜひ…、初め、とっつき難いかもしれないですが、お話しするととてもいいご主人です。
そうそう…
りんが、このところずっと下痢してて、とても心配です。
そう言う事ありました?
「あ、ホントにちょっとだ」が笑えます!高田馬場は自宅から近いので今度行ってみます。
って思ってしまいました(^^)。
こういうの、見ただけでもう、うれしくなってしまいます♪。
芥子、あの、アンパンの上に乗っている(笑)
ふわっととにかく香ばしいんです。
ああ、食べてもらいたいなぁ…(u_u*)~
豆腐だけでも美味しいんですが、
だだ茶豆に、しかも生海苔!
これが、又美味しくて~(^^)。
この食べ方が、実に素晴らしい一品になるんですよね~。
田舎、これまでにいつも売り切れだったりしてまだ食べた事がなくて…。
でも、さすが傘亭。
玉子とじもただものではなかったです♪。
去年の夏に女将さんがら、メールを頂いていたのですが、なんだかなんだで行けずじまいでした。
今年は、ぜひ、行ってみたいです!
日にちが分かったら、教えて頂けるとうれしいです。よろしくお願い致します。
ご主人が、これを盛りつけているというだけで、なんだか微笑んでしまいます。
それはさておき、こちらのかけ汁は、さすがのもの!
素材にあれだけの拘りを持たれているご主人ならではの一品です。
ぜひ!
そういえば、冬限定の、鴨南蛮も是非食べて欲しい、と言われました(^^)。
春のお蕎麦ですね(笑)
お花畑みたいで美しい~
こんなお蕎麦もあるんですね。
季節感があるっていいなぁ
お蕎麦屋さんのイメージがどんどん
変わります。
芥子切り、どんな味がするんだろう?
更に茶豆と生海苔が加わって・・・。
勝手に想像して、口の中が喜んでます。
ああっっ食べてみたい。茶豆って濃厚で甘くて、本当に美味しいですよね。
改めまして、お誕生日おめでとうございます…
傘亭さん…
私は、もう2年くらい、ご無沙汰しています。
こちらのご主人は、ご自身は、お酒は召し上がらないと伺ったことがあるような…???
何もかも、いつも、素晴らしい品揃えですね。
…そういえば、こちらのお店への初訪は、4年前の、ちょうど今頃でした。
いつだったか、こちらで頂きました田舎蕎麦は、かなりの噛みごたえだった印象が…♪
記憶に残る一期一会が、何より嬉しいですね…
埼玉ですと、うつす川と言うお寿司やさんが、限定で、御盆休みと正月休みにお蕎麦の日なのですが、絶品ですぅ
相変わらずの豊富な酒の品揃えや料理の数々に、ご主人の強いこだわりが窺えますね。私がかつて訪れた折に見かけて驚いた‘菊姫 菊理媛 1合1万2千円也’がいまだに掲示されていることに、ご主人の心意気を感じます。
私もこちらでの温そばの経験が無いのですが、写真の「玉子とじ」の何とカラフルな事。いかつい風貌のご主人(失礼)のイメージとはあまりにかけ離れた華やかさに、びっくりいたしました。
そう言えば以前に、店内の随所にかわいらしい野の花の一輪刺しが置かれていたことがあり、これを活けたのも他ならぬこのご主人なのかと、思わず苦笑してしまったことがありました。
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